赤いランドセルを背負うまこちゃんを学校に連れて行くのはボクの役目だった。
可愛いまこちゃん。幼いまこちゃん。そんなまこちゃんを一人で登下校なんてさせられない。
朝は家まで迎えに行って、手を繋いで小学校へ。
帰りは高校生と小学生じゃ終わる時間が違うから一緒じゃなかったけど、まこちゃんにはオトモダチが多かったから一人になることなんてなかった。
ボクが帰ると、まこちゃんが遊びにくることがある。大体、お母さんとかお父さんとかが帰ってくるまで一緒にいるのがいつものことだ。
今日も学校が終わった後、まこちゃんはボクの家に遊びにきていた。にこにこ笑っていつものようにソファに座っている。
友達できた?ってきいたら、指を一本一本折りながらまこちゃんは一人ひとり教えてくれた。
きょうこちゃんは、かわいくてあたまがよくってまこだいすきなんだよ!
びゃくやくんは、かっこいいけど、ちょっとこわいかなぁ…。いつもどういうことだなえぎ!っておこられちゃうんだ。
さやかちゃんはね、ほんとうにおにんぎょうさんみたいにかわいくて、すごくやさしいの。それでなんでもわかっちゃうんだけど…えっとね、ないしょだよ?えすぱーなんだって!
きいた名前をボクの頭の中に刻みつけていく。両方の手の指を使っても終わらないそれを笑顔で聞いてはいたけれど。
にこにこと笑顔で教えてくれるまこちゃんは凄く可愛いけれど、同時に憎らしく思えて、意地悪のつもりでボクは心にもないことを口にする。
「まこちゃんオトモダチたくさんできたんだねぇ…もうボクはいらないかなぁ」
ぴたり、とまこちゃんの声が止まった。ボクが後ろにいるってのもあって、まこちゃんが俯くとその表情は全然伺えない。
「まこちゃん?」
ボクはそっとまこちゃんの顔が見えるように覗きこんだ。
「やだ」
そう呟いたまこちゃんの目は薄い涙の膜で覆われていた。ふるり、と頭をふった拍子に大きな涙がぽろりと落ちる。
「なぎとおにーちゃんいなくなるのやだ…」
「うん、ごめんね。ずっと一緒にいるよ」
本格的に泣き出してしまったまこちゃんをくるりと反転させて正面から抱きしめると、まこちゃんは力を入れてボクにしがみついた。
ぽんぽん、と背中を叩いてあやしてやる。
詰らない嫉妬。醜い独占欲。狭量なボクの心は、いつもこんな充足感の為にまこちゃんを傷つける。
離れるつもりもないくせに。ボクを求めてくれる言葉を聞きたいがために、口にするそれが嘘だとまこちゃんは気付いていない。
気付かせるつもりもないけれど。ずっとずっとボクの腕の中にいればいい。
「ずっと、一緒だよ」
呪いをかけるように、ボクはもう一度だけ呟いた。
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