ボクの体質を、日向クンは知っている。
日向クンとは大学に入ってからの付き合いだ。けれども、同じゼミの同期がたった二人っていうこともあって大分仲良くなっている、と自分では思っている。
災難に巻き込まれる。変なものをみる。そのせいで、常に青白い顔をしていたボクを面倒見のいい日向クンが構ってくれたのが一番最初だった。
超のつく位のお人好しである日向クンとの縁はまだ続いている。そして、ボクには日向クン以外に友人と呼べるような友人はいなかった。
その一番の原因はボクの体質だろう。
一つは、霊感体質。
ボクは、他の人の見えないものをみて、聞こえない声を聞く。まだ素直だった子供の頃はそれを口にしてよく気味悪がられていた。
それを反面教師に、ボクは自分のことをあまり話さない性格になった。
もう一つは、幸運。
ボクの身にどんな不運が起ころうとも、それを補うような幸運が訪れる。そのせいで、親族友人その他諸々いなくなってしまった。
だから、ボクはあまり特別な人を作らなくなった。
じゃあなんで日向クンが今友人であるかというと、彼のお人好しと面倒見の良さ。何よりも、彼の体質に由来する。
彼は、霊的なものを感じない。だからその影響は彼には及ばない。その原因は、彼の後ろについている誰かさんの力が強いせいだ。
だから、ボクの幸運の代償も彼を害すことはない。その前に、後ろの誰かさんが彼を守るからだった。
ボクは、そんな後ろの誰かさんに感謝はするけど、ちょっと苦手だった。真っ暗に澄んだ目。何も映してないような、伽藍堂の瞳。
彼もボクのことが嫌いなようだった。まあ、彼の役目が日向クンを守ることだって考えるとそれは致し方ないことだろう。
日向クンに全部話した時に、彼のことも含めて話したのだけれども、日向クンは、悲しそうな嬉しそうなそんな複雑な顔で笑っていた。
そう。ボクの話を聞いた日向クンの思考は後ろの誰かさんに占められてしまって、ボクの傍迷惑な体質なんてどうでもよさそうだった。
曰く、どうせ俺には被害こねーんだろ。じゃあいいや。とのことらしい。なんとも男前且つ大雑把な返事だった。
いいのか。いいんだろう。日向クン自身がそういったのだから。
こうして、ボクと日向クンは友人となった。
こんな特例でもなければ、ボクは自分から近寄らない。もしも迂闊に近寄られたとしても、どうせ相手から離れていくのだろう。
だからきっとこれからもボクの体質を知ってそれでも尚一緒にいるのは日向クンだけだと、ボクは思っていた。
ボクは日向クンから貰った苗木と、日向クン。そして、そして人ではない男の子と一緒に自分の部屋へと戻ってきた。
因みに後ろの誰かさんは、普段日向クンの中にいて表には出てこない。本人曰く「ツマラナイ」らしいけど、そんなんで守護霊やっていけるのかとボクは常々思っている。
今ボクの目の前にある苗木は、どこにでも有りそうな感じの。でも少なくともボクは見たことのないものだった。
日向クンは、溜息をつきながら、男の子のいる場所を見つめていた。
「なあ狛枝。本当にここにいるのか?」
日向クンの指の先には、きっちりと正座をして顔を強ばらせている男の子がいる。
さっきまでみたいに笑えばいいのに。なんて、ちょっと思った。
「うん、いるよ。正座してる」
ボクの言葉に、男の子は少しだけ顔を上げてボクの方をみた。
その目に浮かんでいるのはまるで何かを探っているような、そんな色だった。
「…」
じっと見つめ合うボクたちの間の沈黙を割いたのは、目の前の男の子だった。
"…ボクのこと、みえるんですか?"
さっき聞いた、ありがとう、と似た少し落ち着いた声で男の子はボクに問いかける。
ボクは意思の疎通ができる事にほっとしながら、笑って答えた。
「うん。みえるよ。…キミは、誰?」
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