幸せすぎて死ぬんじゃないか、と思うときが狛枝にはたまにある。
それは決して比喩ではなく、狛枝にとっての幸運の在り方がそうなっているのだ。
不運のあとにはそれ相応の幸運が舞い降りる。即ち大きすぎる不運のあとには大きな幸運が。
狛枝にとって不運とは幸運の前兆であり、決して忌むべきものではない。
どんなことがあろうとも、それ相応の幸運が降ってくるのだから、次はどんな幸運が来るんだろうか、そう考えるくらいの余裕がある。
しかし、逆に不運が訪れないのに幸運が訪れる場合、狛枝は漠然とあー今度こそボク死ぬんじゃないのかな。と考えるのだ。
例えば、年下の新入生に一目惚れをしたとき。
例えば、そんな彼が同じ「超高校級の幸運」と呼ばれる存在であると知ったとき。
例えば、それを通じてただの先輩後輩というよりずっと距離が近くなったとき。
例えば、そんな彼と恋人同士になれたとき。
例えば、たとえば。
例えば、そう、今この瞬間。
顔を真赤にした自分の恋人が着衣の乱れた状態でボクの上に跨っている、いまこのとき。
恥じらいながら、恋人──苗木誠クンはボクのコートとシャツを頑張って脱がせようとしているみたいだ。
顔を真赤にしてる苗木クンはもう本当に可愛い。それを見てたくて自分では手を出さないことにした。
事の発端はなんだったか。
ボクが目が覚めたその日に苗木クンとは再会した。
絶望の残党と呼ばれたこと、ゲーム内のコロシアイ生活、今まですべての不運を踏み台にして苗木クンとの再会という幸運をボクは手に入れたのだ。
本当はそれっぽっちの代償で苗木クンと再会を果たすなんて(しかもボクのことを覚えててくれた!)あまりにも幸運のほうが大きすぎる気はしたけれど、実は出会った時から苗木クンに関する幸運で大きな不運がボクや苗木クンに訪れたことはない。それもこれも多分全て苗木クンの超高校級の幸運の力だって信じてる。
苗木クンとのことで不運は起きない。それは苗木クンが可愛くて凄くて輝いてるからだってボクは信じてるし、今回の再会のこともきっと苗木クンの幸運が働いたんだろう。そうに決まってる。
再会後、ボクたちは元通りとはいかないけれどまた恋人同士になった。昔もそうだったけど、霧切さんと十神くんの視線が更に冷たく鋭くなったことにちょっとだけ優越感。超高校級と呼ばれる二人が本気でボクに嫉妬しているんだ。いつもだったらボクなんて、とか思うけど苗木クンだけは譲れない。それぐらい優越感感じてもいいと思うんだ。
苗木クンはずっとボクのところにいてくれるわけじゃなかったけど、それでもボクは満足だった。
嫉妬心は勿論あるけど、超高校級の希望と呼ばれる苗木クンを独占するなんてクズみたいなボクには烏滸がましいことだってわかってる。でも苗木クン自身がボクを選んでくれてるんだから。ボクはボクじゃなくって苗木クンを信じてるんだ。あと、苗木クンは仕事できてるわけだし。昼に誰と一緒にいても、夜島に泊まるときにはボクの部屋に来てくれるしね。
だけど、そうなってくると、自分自身の左腕──江ノ島盾子の腕が邪魔になってきた。
絶望の塊みたいなそれで苗木クンに触れるなんて有り得ないことだし、何より苗木クンはその腕を見るたびに傷ついた顔をする。何より誰より嫉妬心を煽られるのが自分自身にくっついてる左腕ってことも我慢できなくなってたから。
この間、左腕を切り落とした。麻酔をしてたからあんまり痛くなかったけど、苗木クンはボクよりずっとずっと痛そうな顔をしてた。それから、ボクのなにもない左腕をみて苗木クンは悲しそうな顔をすることが増えた。
それで今日、ボクが腕を切り落とした日から数えてはじめての苗木クンが島に泊まる夜。
さあ寝ようか、と部屋に入った瞬間、ベッドに押し倒された。
あれあれあれあれって思ってると苗木クンが顔中真っ赤にして泣きそうな顔をしてた。
「きょうはぼくががんばるから!」
一瞬よくわからなくって。考えてもちょっと理解ができなくて。
苗木クンの言葉をぐるんぐるん反芻してやっと理解した時に。
ああもうボク死んでもいい、って本気で思った。
結局コートもシャツも脱がすのを諦めたのか、苗木クンはベッドの下におりてズボンの方に手を伸ばしていた。
チャックをおろして、ちょっとためらったあとに少しだけズボンと下着をずらし、ボクの性器を取り出す。
もう割と大きくなっていたそれに苗木クンはますます顔を真赤にする。
だけど、やめる気はないらしい。ボクがやるんだから動かないでね!といってそのままボク自身を口に含んだ。
(うわぁ、うわぁあああ)
フェラなんてはじめてだった。
だってボクのアレなんてそんな汚いものを苗木クンの口に入れるなんてそんなことさせられないと思ってるし。
でも、今、苗木クンはボクの性器を口に含んでる。苗木クンの表情とぎこちない舌使い、たまに漏れる吐息にたまらなく興奮する。すごくすごくイケないことをしてる気分だった。
苗木クンとの性行為ははじめてじゃない。それこそ、まだボクも苗木クンも希望ヶ峰学園の生徒だった頃に初めては済ませてる。
でも慣れることなんてない。いつだって苗木クンは可愛いし可愛いし可愛いし可愛い。もうちょっと余裕が欲しいけどそんなのいつまでたっても持てた試しがない。
「…も、苗木クン…出るから…っ」
絶頂が近い。だって苗木クンの中にいるんだ。それだけだってもう腰にくるのに。
苗木クンはふるふると頭を横に振ってこちらを向いた。角度的に上目遣いになるのは当然のことだった。
その瞬間にボクの性器から精液が飛び出す。
「苗木クン…っ、出して、ほら、吐いて」
苗木クンの口の中に飛び出した精液は全部おさまりきらなかったらしく、口の端から白濁液が垂れている。
精液を出すようにいったボクの言葉なんて聞いてないというように、苗木クンは口を小さな両手で覆ってこくこくと少しずつだけど飲んでるみたいだった。
「苗木クン…っ」
「…っ、あんまり、美味しくないね…っ」
口の中のそれを全部飲み干した苗木クンは口端に白いものをつけたままで笑った。
それがいつもよりずっと幼く見えるのにとても艶かしくうつる。
苗木クンは次に自分のはいていたズボンと下着、ジャケットもシャツも全部脱いでベッドの下に落とした。
そしてボクの上に跨って勃ち上がっていたボクの性器に自分のものをこすりつける。
必死に腰をふる苗木クンと漏れる喘ぎ声にボクの性器はますます体積を増していく。
先走りの液体でぬるぬるになった苗木クンの手に自分の手を重ねて、強く握ってやる。
「ふぁ、ぁ…っ」
溶けたような大きな目に涙が浮かんでいる。
希望に輝くその瞳には快楽の色が濃くうつっていて、ボクはそっとその目尻にくちづけた。
そして、重ねた手を上下に動かす──自然と苗木くんの手も動く事になってお互いの性器を更に擦り合わすことになる。
「はぁ、っ…ん、」
何度目かのタイミング。二度目の絶頂が近い、と思った瞬間苗木クンの性器が精液を吐き出す。
その衝撃でボク自身も二度目の絶頂を迎えた。
はぁ、と息をついてぽすりと苗木クンは頭をボクの胸に預けた。
左手があったら抱きしめるのに、残念ながらボクには精液で汚れた右手しかない。とても悔しい。
「苗木クン…」
「…まだ、まだがんばるからね…っ」
そう言って顔を赤くしたまま、苗木クンは精液のついた右手を自分の下半身へ運んだ。
白濁の液体をぎこちなく後ろの穴に付けて、自分自身で準備をしている苗木クンにボクの性器はまた勃ち上がりはじめた。
正直耐えられる人がいるんならそれは聖人君子かなんかでボクのような欲に塗れた一般的男性には無理だ。
というか、この状態で勃たなきゃ男じゃない。
可愛い苗木クンが恥じらいながらも頑張ってボクのために(ここが重要だ。今の苗木クンの行動はボクのためのもの!)ボクを受け入れる準備をしてくれている。
可愛い声を漏らしながら苗木クンは自分の後ろに集中している。
それを見てるのもいいけれどいい加減ボク自身が限界が近い。本当苗木クンの前では理性なんて紙屑のようなものだ。
日頃カッコつけてみたいと思ってるけど残念ながら苗木クンを前にするとボクはいろいろはずれてしまう。
日向クンからもいい加減にしろってこないだ怒られたけど、無理だ。
「え、んっちょ…っ」
ぐっと右手を伸ばして苗木クンの奥の穴に触れる。
大分解れてきてるけどまだ足りない。
あんまり自分の精液舐めるのは気がすすまないけど、手が伸ばせる範囲に潤滑油になるようなものはない。
仕方なくボクは右手を自分の口元に持ってきて指を舐めた。唾液をたっぷり絡めるように。
それをみた苗木クンの顔はますます真っ赤になった。
「こまえだくん、…っぁ」
そんな苗木クンの首筋に唇をおとして、十分に濡らした指でさっきまで苗木クン自身が弄っていたそこに触れた。
穴の周りをなぞったり、時折指の先端を入れてみたり。
その度に苗木クンの声が漏れる。苗木クンの反応だけでボク自身は三度目の絶頂を迎えられるんじゃないのかな、というぐらい張り詰めていた。本当は何も考えないではやく苗木クンと一つになりたい。だけど、苗木クンを傷つけたくない。苗木クンに痛いってもうしたくないって思わせたくない。それはボクなりの矜持だった。
だから念入りに念入りに我慢が近い今だからこそ普段よりずっと時間をかけてそこを解していく。
もういいんじゃないかな。大丈夫だよね、と徐々に解れてボクを受け入れる準備が整っていく苗木クンの穴に指を突っ込みながら思った。つぷんと音をたててボクの指を飲み込むそこは最初こそ固く閉じられていたけれど、今は二本、三本入れて掻き回すことができるぐらいには解れていた。
早く入れたい。早く入れてぐちゃぐちゃに掻き混ぜて突き上げてどろどろにしたい。苗木クンの一番奥にまで突っ込んでボクの精液を吐き出したい。それで苗木クンの体の全部にキスをして、真っ赤になってる苗木クンを抱きしめたい。
多分今のボクの状態からいって、一回突っ込んだだけじゃ終わらない。多分いつもどおり苗木クンが気絶するまで抱き潰しちゃうんだろうなぁと限界の近づいた浮ついた頭で考える。
「っねぇ苗木クン」
もういいよね、と許しを乞う。苗木クンが上にいるままじゃつっこめないからそのままちょっと動いて欲しいな、という意味で。
苗木クンはふ、とこちらに視線を合わせると泣きそうな顔でぶんぶんと頭を振った。
「ボクが…」
ボクが、がんばるんだから…、と掠れた声が耳に届いた。
あれ、と思った瞬間に苗木クンはボクの性器を片手で掴んだ。その感触にイキそうになるけどぐっとこらえる。いくらなんでもここでイクのはないよね。うん、ないよ。
ゆっくりゆっくり、ボクからしてはじれったいと感じるような時間をかけて苗木クンは自分の後ろにボクの性器をあてがった。先っぽだけ入った状態で苗木クンはボクにしがみつくように体制をかえる。
「ぁ、」
騎乗位ってやつだろうか、これ。今の幸せのまま腹上死できるならそれもいいかも、なんて馬鹿なことを考える。
本当はこのまま苗木クンを突き上げてみたい。でも頑張ってる苗木クンの邪魔をするのも嫌だし、何よりボクのために頑張ってくれている苗木クンの努力を無碍にするなんてボクにできるはずがない。
「ぅ…狛枝クンの、おっきぃ…」
ヤバかった。今のはちょっと破壊力大きかった。堪えた自分自身を褒めてやりたい。クズでカスな自分でもやればできるってことだよね!
ちょっとずつちょっとずつ腰を落としている苗木クン。それを言い換えるとボク自身がちょっとずつ苗木クンの中に入っていってるってことだよね。そんなことを考えてると、苗木君は泣きそうな声で囁いた。
「ぁ、も、これいじょ、おっきくしないで…っ」
泣きそうな苗木クンも可愛いしそんな苗木クンのいうことだったらなんでも聞いてあげたいんだけど、それは無理だと思う。三度目の絶頂を我慢しながらボクはひたすら頑張る苗木クンを見ていた。
やっとボク自身が苗木クンの奥に収まった時、苗木クンはほっとしたように息をついた。
その顔をみた瞬間、今まで頑張って繋ぎ止めていた糸がぷちんと切れたような気がする。
「っ、ゃ…、こまえだくん…っ」
下から頑張って腰を突き上げる。本当は体勢逆のほうが楽なんだけど、頑張るっていった苗木クンの意志を尊重してそのままの体位で。
粘着的な体液の音がお互いの息遣い、喘ぎ声の合間に聞こえる。
苗木クンのイイ所を掠めたのか、声がちょっとだけ色をかえる。
ボク自身をそこに擦りつけるように苗木クンが動く。
ああもうたまんない。苗木クンの中にボクがいる。苗木クンがボクを求めてくれている。苗木クンに必要とされている。愛されている!
苗木クンとのセックスが好きなのは、苗木クンが好きで、気持ちいいからっていうのもあるけれど、一番愛されている、必要とされている、求めてくれている、というのを感じられるからだ。
快楽に溺れる苗木クンの姿はいつもの苗木クンとはちょっと違うけど、特別って感じがして好きだ。だって、こんな苗木クンの姿を見れるのはボクだけだ。他の誰も知らないびっくりするぐらいに色っぽくて綺麗で可愛い苗木クンを他の誰かに見せる気なんてないからちょっとした優越感。
「はぁ、…っ」
苗木クンの動きに合わせるように突き上げる。苗木クンがのけぞるように晒した喉に唇を寄せてちょっとだけ強く跡を残す。あとからボクが皆に冷たい目で見られて、苗木クンが真っ赤になってるところまで想像した。
そのまま下に唇を落として、首や胸に沢山の跡をつけた。三日もすれば消えてしまう鬱血の跡は、多分次にあった時にはもう残ってないだろうけれど。
「も、狛枝クン…っむり…っ」
締め付ける力が強くなる。あ、イクかも、と思った瞬間に一番の締め付けがきた。
「おく、おくにだして…っ」
これで我慢するなんてできるはずがない。案の定ボクは三度目の絶頂を苗木クンの中で迎えた。
くったりとボクに体重を預けるようにする苗木クンを右手で抱きしめる。精液とか唾液とかついてるけどもう二人共どろどろだからいいよね。
「こまえだくん…」
「どうしたの?苗木クン」
絶頂を迎えたあとのちょっとだけ気怠い空気の中、苗木クンがボクの名前をよんだ。
視線を合わせると苗木クンは嬉しそうに?楽しそうに?笑った。
「きもちよかった?」
ボク、狛枝クンが喜んでくれたらいいなって、無理させちゃダメだって思って今日ががんばろうって決めてたんだ。
ボクは本当に幸運だ。この幸運にはもうボクが死ぬか島のみんながみんな揃ってまた眠りにつくぐらいじゃないの不運じゃないと釣り合わないだろう。…でも、ボクにはボクの幸運がいる。ボクのカスでゴミみたいな幸運じゃなくって、苗木誠クンっていう本物の幸運が。苗木クンとの出会いは幸運で奇跡で運命で救いで希望だったんだって改めて思った。
「こまえだくん…っ」
「ごめん、苗木クン無理」
幸せで、幸せすぎて。
まだ苗木クンの中にあったボクの性器がまた大きくなっていく。堪え性がないと自分でも思うけど、苗木クン相手だからしょうがないよね。
「今度はボクが頑張るから」
にこ、と笑って苗木クンを片手で抱きしめたまま体を反転させる。衝撃を与えないようにゆっくりと。
本当はボクも全部脱いでしまいたかったけど、苗木クンがしがみついてて片手しかない今の状態ではちょっと無理っぽい。
だからそのまま首筋に唇を落としてボクはまた動き始めた。
「ちょ、ゃ…っ」
「待てないよ苗木クン」
欲望のまま、ボクはただ苗木クンを貪った。必死で強烈な快楽についていこうとしている苗木クンだけど、その性器に触れるとちゃんと反応がかえってきた。前と後ろ、二方向からの快楽に苗木クンの目は熱で潤んでそこには快楽だけが浮かんでいた。大きな瞳に涙が浮かんでそのままころんと落ちちゃいそうだなと思う。そうなったらその目を貰って大切に大切に保管しよう。本当は食べちゃいたいけど、そうするともう苗木クンの目を見れなくなっちゃうからね。
ぎゅっとコートにしがみついた苗木クンが可愛くて可愛くてますますボク自身が大きくなる。その度に苗木クンの声の色が変わっていく。あ、もう限界と思った瞬間に苗木クンの中でボクの性器ははじけた。と同時にぎゅう、と握り締める力が強くなってびくんと苗木クンの体が大きくはねる。性器からは精液が飛び出して苗木クンのお腹を白く汚していた。
ぎゅっと握られた手の力は弱くなって、もう後ろに回されているだけの状態だった。
苗木クンは三度目の絶頂に大分苦しそうに息をついている。そんな苗木クンの頬に伝う涙を舐めて、そのまま濡れた瞳にも舌を這わせた。
このまま舐めとってしまいたいな、とも思ったけど、苗木クンの目に映るものも愛しているから諦める。
そして、このまま入れておくとまた無理させてしまいそうだったので名残惜しいけど自分自身を苗木クンの中から引きぬいた。性器と一緒にどろりとした精液が垂れてきてまた劣情を煽られる。欲塗れの思考がいやになるけど、しょうがないよね、苗木クンが相手だし、と勝手に責任を転嫁した。もう半分ぐらい眠りにおちている苗木クンはへにゃりといつもよりずっと幼い顔で笑う。
「こまえだくん」
だいすき、とそれだけいって苗木クンの瞼は閉じた。
また無理をさせてしまった、という後悔が頭に浮かぶ。そして、このあとの処理のことを考えようとしてやめた。今はソレ以上にさっきの苗木クンの言葉による自分自身の熱を冷ますのが先だろうと、ボクは熱をもってしまった自分自身を慰めるためトイレへと向かった。
back