秋──今年は異常気象だとかで、暑い日が続いていたけれど、ある日を境に一気に寒くなって、今はもう秋すっ飛ばして冬なのか、という勢いで寒い。
昼間はまだ日差しがあるからマシだけど、朝夜は大分冷え込む、そんな時期だ。
電車がつくまであと十分。因みに着いたのは三十分以上前だったりする。
必要以上にそわそわしてるのは、久々に苗木と逢うこともだけれども、同時に今日から三日間、苗木が俺の家に泊まりに来る、からだ。
どうしてそんなことになったのか、というと、連休を利用してこっちへ帰ってくると苗木は最初から決めていた。
けれど、それを家族へと話したところ両親は旅行、妹も部活だから家は誰もいないということだったらしい。
どうせ一人だから帰ってくるのどうしよう、と言う苗木に俺が反射的に「じゃあうちに来るか」と訊いたのがきっかけだ。
俺としては、そんなに頻繁に逢えない苗木と、更に逢う日が少なくなるのは嫌だったからなのだけれども、苗木も同じ気持ちだったのかもしれない。
少しの沈黙の後、「……いいの?」と小さな声で呟いた苗木に、俺は寧ろ歓迎だ、ということを願望に任せて捲し立てた。
それが功を奏したのか、結果として、苗木の三日間のお泊りが決まったわけだ。

――そんなことを考えているうちに電車が到着する。
暫く待つと、人並みの中から大きな荷物を持った苗木が出てきた。
「苗木!」
ここだ、というように手を振れば、苗木も気付いたのだろう嬉しそうに空いているほうの手を上げた。
「ありがと、日向くん」
にこりと微笑む苗木。久々にみた可愛い苗木は相変わらず可愛い。
そんなことを心の中で思いながら、苗木が手に持っていた荷物を持ってやる。
三日間は長いようで多分、短い。それをどう過ごそうか、ずっと考えていたことを改めて頭の中で再確認する。
「凄く楽しみにしてたんだ!三日間よろしくね、日向くん!」
「ああよろしく、苗木」
凄く、凄く楽しみだ。
これからの三日間のことを考えて、俺は心の中でにやりと笑った。

家についてからは、結構ばたばただった。
もう互いに夕食は食べていたものの、着いた時間が遅かった。
荷物をとりあえず必要なだけ出して、苗木を風呂へと送り出した。
苗木は俺のことも気にしていたようだったけれど、俺は苗木を迎えに行く前に風呂は入っていたから必要ない。その旨を伝えれば、納得したように、苗木は風呂へと向かった。
その間にもすることは沢山ある。
それも、また楽しみの一つではあるから、俺はよし、とばかりにまずは自分の部屋へと向かった。


苗木が風呂から上がって部屋へと戻ってきた。
あとは寝るだけだと思っていただろう苗木に、そっとあるものを渡す。
それは、苗木が風呂に行っている間に、取り出した紙袋。
それを見て、俺の説明を聞いて、苗木は目を見開いた。
つまりはこうだ。
希望ヶ峰学園にも体育祭はあるらしい。あの学園でどんな大層な体育祭が行われるのだろうか、と思いながら聞いていたけれど、普通の所と大差ないらしい。
ただ、人数が少ない為に、あまり大規模な競技はないらしいが。
だけど、俺の頭に一番残ったのは、苗木の『うちの学校ブルマだから、寒くって』という一言だった。
希望ヶ峰学園はこのご時世、まだブルマ着用を義務付けているらしい。
その話を聞きながら、頭の中に浮かんでいたのはブルマ姿の苗木の姿だった。正直に言おう。それ以降の話は右から左だった。
あの白くて細い、だけど柔らかな太腿が惜しげもなく晒されている様。その状態で跳んだり走ったりする苗木の姿を想像しただけで、俺の下半身に熱が集まる。
ブルマが廃止された理由を、俺はその時に身を持って実感したのだ。確かに、アレはそういう目で見れば大層危ないものである。
けれど、希望ヶ峰学園はまだブルマ着用が続いている。つまりは、苗木のブルマ姿をあの学校の男連中は見ているのだ。俺は見たことがないのに。
そう思うと、理不尽な思いが胸を駆け巡る。
どうして、俺は希望ヶ峰にいないのだろう。恋人なのに、俺の知らない苗木を知る男がいる、といういうことが我慢ができなかった。
けれど、希望ヶ峰に編入なんて無理だ。予備学科、というものがあることは知っているが、苗木は『超高校級の幸運』という名を戴く本科生だ。
おまけに、希望ヶ峰学園の本科と予備学科は同じ学校でありながら、全く違う学校だと思った方がいい、というほどその中身も待遇も異なっているという。
希望ヶ峰に行ったとして、苗木の傍にいられないのなら無意味だ。それなら、今と大差ないだろう。
じゃあ、どうすればいいか。考えて考えた先に俺は閃いた。
ブルマ姿を見せて貰えるよう頼めばいい、という単純な方法に。
見たいから、という理由に難色を示すかもしれないが、多分土下座でもして頼み込めば呆れながらも了承してくれるだろう。
そう思って、通販で買った紺色のブルマと体操服だったのだ。

そしてこの袋の中には件の体操服が入っている。
「苗木」
「……なに、ひなたく」
「見せてくれ」
「……嫌だよ」
苗木の顔がわかりやすく歪んだ。
夏にも似たようなやりとりがあった気がするけれど、それはつまり同じように押せばなんとかなるということだ。
だけどきっと苗木も同じようなことを考えているのだろう。
まるで猫が毛を逆立てるように、警戒する様が凄く可愛い。
「な、いいだろ」
見るだけだから、そんな心にもないことを言う俺に、苗木はきっと強い視線を向ける。
「それは違うよ!」
日向くんが、本当に見るだけで終わるわけないじゃん。
正論だ。ぐうの音も出ないほどの正論だ。
けれど、ここで引き下がるわけにはいかない。
「でも学校では着てるんだろ?」
違う学校だけど、ちょっとぐらい、同じ学校って感じを味わいたいんだ。
そんなことを小さく零すように呟くと、苗木の眉がへなりと下がった。
それを見た俺は、もう少しでイケる――そう確信した。
「なぁ、苗木」
ダメか?
「……日向くん、ズルいよ」
じっと見つめてそう言えば、苗木は困ったようにそう呟いた。
よし、と心の中でガッツポーズを決めながら、けれどそれを表には出さないように、笑顔を浮かべる。
だけど、そんな俺の努力は無駄だったのか、苗木は小さく呟く。
「日向くん顔やらしい」
「だって嬉しいんだよ」
目の前にある、体操服一式と、あとちょっとしたオプションを纏めた紙袋を苗木へと手渡す。
苗木は小さく顔を歪めて、そして溜息を一つついてから、それを受け取った。
「ここで着替えてもいいんだぞ」
「……ひなたくんの、へんたいっ」
苗木は真っ赤に顔を染め上げると、その言葉と、近くにあったクッションを俺の顔に投げつけてそのまま部屋の外へと出て行った。
それを見送って、俺は準備していた他のものを詰めた箱をベッドの下から取り出す。
折角苗木がブルマを履いてくれるのだ。
雰囲気、と言ってはなんだけど、どうせやるなら、徹底的に、と思ってしまうのも無理はないだろう。次があるかはわからないのだから。
少しの準備の後、俺はベッドの上に座って苗木を待った。
色々なことを考えていると、かちゃりとドアノブが動く音がして、反射的に俺は時計に目をやった。
着替えるだけにしては長い時間が過ぎていたことに今更気付く。
多分色々な葛藤があったのだろう。そう思って、ドアの方向へと視線を向ける。
そろりそろり、とゆっくりと扉が開かれ、そこからひょこりと苗木の顔が覗く。
「……日向くん、本当さ」
呆れた声。そんな言葉も、照れ隠しだというのはわかってる。
実際に覗いた苗木の顔はもう耳まで真っ赤だった。
「でも、そんな俺の言うこときいてくれる苗木が好きだぞ」
「……っ!」
「なぁ、苗木」
こっち来いよ。と手招きすると、うーだのあーだの暫くした後に、苗木が小さく呟いた。
「……目、」
「ん?」
「目、閉じてて」
ドアの開閉音。ぱたぱたという苗木の足音。そして横に座った感覚と、振動。
今直ぐ目を開けて見たいという欲はあるけれど、どうせすぐに見れるのだ。
開けてたことがバレて、苗木が拗ねてしまえばもう着替える、と言ってまた部屋の外に出てしまうかもしれない。それは困る。
「いいよ」
そう言った苗木の言葉に従ってちらりと目を開けると、ちょっと離れた場所にちょこんと座る苗木の姿があった。
体操服、に下はブルマ。そして一緒に入れていたニーハイソックスもしっかり履いてくれている。
露わになった太腿と、紺色のブルマ、そして黒色のニーハイソックス。
上は、普通の、というか俺が中学の頃着ていた体操服。しっかり洗ったから多分大丈夫だと思う。
胸のゼッケンは『日向』と書いてあるけれど、まるで中学生の苗木を目の前にしているような感覚を抱いてしまう。
けれど、あの頃よりも苗木は成長している。主に、胸部が。
そのせいで、パツンと張った胸部にどうしても目がいってしまう。
それこそ雑誌なんかで見る巨乳とは言えない胸だけれども、その胸部は前のぺたんとしていた時とすると大分育っている。
けれど形の良さは多分俺が今まで見たどんなグラビアアイドルやAV女優なんかより良いと思う。あと感度も凄く良い。
どんな胸だって、苗木の胸、というだけで俺の劣情を誘うのだけれども、苗木の胸はどんどん成長しているように思える。主にエロい方面に。
胸だけじゃない。他の所も段々エロくなっている、気がする。それを苗木は俺のせいだ、と言っていた。確かにそれはそうかもしれないけれど、多分苗木にもその素質があったんだと思う。
中学の頃はそんなエロさを感じさせなかった苗木が、今はこんなにエロくなりました、と感慨深く思う。
それらを踏まえて目の前の苗木を改めて見る。うん、凄く、エロい。全体的に、ヤバい。
きゅっとしまった小さな尻がブルマの中に収められている。ちゃんと気をつけて履いただろうから、そんなことはないのだろうがあの隙間から所謂はみパンが見えることもあるんだろう。危ない。シャツが長くてちょっとしか見えないのも逆にえろい。
そして、ブルマから伸びる足は、細いけれど適度に肉がついている。すらりとして、柔らかな太もも。あの絶対領域の素晴らしい触感を知るのは俺だけだ。俺だけじゃなかったら許さないけど。
こんな格好で体育の授業を受けているのかと思うと、今直ぐに希望ヶ峰学園の他の生徒の記憶を消したい衝動に駆られる。
と、同時に同じ学校でなくて良かった気もする。体育の度にこれを見てたら保たない。体育の単位もきっと危ない。
やっぱりブルマは廃止すべきだ。そんなことを改めて思った。
苗木はそっぽを向いているけれど、見える部分の赤さから本当に心から嫌がっているわけではなくて、照れているだけだとわかる。
「……なんか凄いな」
「ばか」
苗木の姿を上から下まで見た後に、ぽろりと口から正直な感想が漏れる。と、すぐに文句が飛んできた。
いつも体育の時に着ているくせに、こうまじまじと見られると恥ずかしいのだろうか。
俺の言葉に、苗木は着ている体操服の裾を引っ張って、少しでも露出を隠そうとする。だけど、そんな仕草も俺の欲を煽ることになるなんて多分気付いていないんだろう。
寧ろ隠そうと、そういうふうにしてさっきよりも強調された胸や、中途半端にブルマが見えている今の現状のほうがよっぽどエロい。
「恥ずかしいのか?」
答えは返ってこなかったけれど、俯いたまま、こちらを向こうとしない苗木の様子自体が答えのようなものだった。
「普通に着てるんだろ?体育の時」
「……そう、だけど」
「他のヤツは見てるんだろ?」
こんなエロい格好。口には出さなかったけど、そんな俺の考えは苗木にも伝わっていたらしい。
「エロい、なんて言うの日向くんぐらいだよ」
呆れたような、そんな声音。ばかばか、だから変態なんだよ。と憎まれ口を叩く苗木に近付く。
「……他の人、は違うもん」
「どうだか」
笑って、前から抱きしめる形でそのまま苗木の尻を鷲掴む。ひゃっと、声を上げて逃げようと身体が強張ったのはわかったけれど、逃すもんかと腕でがっちりと捕まえた。
苗木の形の良い尻が、ブルマに包まれている。その生地越しの感触が思った以上に気持ち良くて、するすると撫でまわす。
「……何、が楽しいのかわかん、ない」
「苗木の身体に触るのはいつでも俺は楽しい」
憎まれ口を叩く苗木の尻だけを撫で回す。そんな中途半端な刺激じゃ物足りないのだろう。無意識なんだろうけど、苗木の腰がもっと触って欲しいというように俺の手に押し付けられる。
「……まだ?」
「も、ちょっと」
パンツとは違う感触。でもズボンなんかよりずっと薄いその生地は頼りなくて、やっぱり危険だと思う。不意打ちにこの尻に触れて、そのまま苗木が襲われたらどうすればいい。
「ちょ、日向くん」
撫で回すだけじゃ足りなくなって、俺はその尻を揉みしだく。柔らかいだけじゃない、ほどよい弾力に苗木の文句なんて届かない。俺はその感触に夢中になっていた。



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