大体休日は一緒にいるけれど、今週の土曜はボクも苗木クンもそれぞれで用事があって、そのせいで会えなかった。
それだけならまだしも、最近は、お互いに色々な要因が重なって碌に二人の時間が取れない始末。
別個の人間だから、それはしょうがないけれど苗木クン大好きなボクはそれすら惜しかった。本当なら毎日会いたいのに。
だから、じゃないけれど、日曜は朝から部屋にいくよ。とメールで約束を取り付けていた。
だけど、あまりにも苗木クン不足だったボクは朝すら待ちきれずに(だって、最近苗木クンを抱いてない。絶対的な苗木クン不足だ)、部屋へと押しかけた。
部屋には鍵がかかっていた。眠っているのだろう、と今の時刻を考える。
だけど、折角ここまできたのにまた部屋に戻るのも勿体無いし、どうせなら、苗木クンの寝顔をみて、できればその横で眠りたい。
そんな欲望に衝き動かされるまま、ボクはこんなこともあろうかと持っていたヘアピンで解錠する。
部屋の中に入ったボクが見たものは目を疑うような光景だった。

「…な、えぎく…ん…?」

「…こま、」

ベッドの上にいる苗木クンとばちん、と目があう。
その瞬間に、苗木クンの顔はまるで瞬間湯沸かし器のように一瞬で真っ赤になった。

「…っ!!」

隠れようとしたのか苗木クンは布団を掴んだ。だけどボクは、布団なんかで今見たものを隠されたくなくて、両手で布団を剥ぎとった。
力を込めていたからか、少しだけ息の荒い苗木クン。ちょっとだけ、顔が赤いのは、ボクに見られたからなのか、それとも──。

「それ、ボクのコート…だよね」

あ、やばい。顔がにやける。苗木クンが今身に着けているコートは、紛れも無いボクのもの。
先々週、寒そうにしていた苗木クンに押し付けるように貸したコートだった。
それから、中々会う機会がなくてまだ苗木クンの手元にあるのは知っていたけれど。

「…苗木クン、なにしてたの?」

苗木クンは、パジャマ代わりのジャージの上からボクのコートを羽織っていた。
赤くなって涙の滲んだ顔と、今の格好とか体勢とか…そういうのからわかってはいるけれど、ボクは苗木クンの口からききたかった。
緩む口元を隠そうともしないで、ボクは苗木クンに近づく。口をぱくぱくさせている苗木クンも可愛い。

「ねぇ、苗木クン──」
「な、にもしてない…よ…」
「嘘つき」

苗木クンの苦し紛れの嘘に騙されてあげるのもまた一興だけれども、正直に言おう。ボクには余裕がなかった。
ここ最近の苗木クン不足と自身のストレス。そこにこの苗木クンの可愛らしさ。久々なのもあってダメージは軽く三倍だ。
端的にいうと、欲求不満。更にいうと、もう既に勃っている。
言い訳をするならば、苗木クンが可愛いのが悪い。というべきか。
苗木クンを後ろから抱きしめて、苗木クンの下半身に手を回す。

「ココ、」

掴んだそこは、もう先走りで濡れていた。ぐ、と先っぽに力をいれると、漏れる苗木クンの甘い声。
パンツもジャージも脱いだ状態で、誤魔化すなんて無駄なことだと思うけど、それすら可愛い。

「濡れてるよ?苗木クンは何もにしてないのに勃っちゃうの?ほら、こんなにだらだら垂らして」
「ち、がう…よっ」

はぁ、と甘い吐息を漏らしながらの否定なんてまるで意味をなしてない。
ボクの言葉か、それとも与える快感にか、苗木クンは小さく首を振って声を漏らす。
手で輪を作って性器を扱く。先っぽから流れてくるそれを潤滑油代わりに、はやめたり遅くしたり。
ぱんぱんになっている睾丸や尿道にも刺激を与えながら、射精への快楽を高めていく。

「ほら、出しなよ」
「ひぁあ、んっ!」

最後の留めとばかりにボクは尿道にかり、と爪を立てた。
その拍子に苗木クンの性器はボクの思惑道理に精液を吐き出した。
ねっとりと手についた精液をボクが舐めている時、苗木クンはくたりとボクに背を預けて息を整えていた。

「…」

舐めた精液の濃さに、ボクはちょっとだけ違和感を覚える。
苗木クンは性に対しての意識が高校生にしては幼い。自分で慰めるなんて殆どしないと言っていた。
そんな彼の性交の相手は、烏滸がましくて、とても幸運なことにボクだけだという。
つまるところ、苗木クンの後ろは処女じゃないけど、前はまだ童貞ということだ。
そして、ボクはここ1ヶ月ほど苗木クンを抱いてない。それなのに、この間2週間空けてセックスしたときよりも精液の味が薄いのは、これはどういうことだろう。
希望的観測と絶望的観測がボクの頭をくるくる回る。
さっきまでの【幸運】を考えると、これが対する【不運】なのだろうか。それなら、苗木クンが誰かと──、なんて想像しただけで誰かもわからない相手を殺したくなった。

「…ねえ苗木クン」
「…なぁ、に?」

ハァ、と息を整えながらの返事。そこには凄まじいほどの色気が混ざっていたけれど、想像で冷えた頭には逆効果だった。

「これ、」
「ぁむっ」
「薄くない?薄いよね?」

付着した苗木クン自身の精液ごとボクは苗木クンの口に指を突っ込んだ。
暖かくて、小さな苗木クンの口の中を掻き回すように指を二本ばらばらと動かす。

「ぅんんんっ」
「ねぇ苗木クン。教えてほしいな。なんでこんなに苗木クンの精液薄いの?久しぶりなのになんで?ねえ?」

薄くなるようなことをした誰か、のことなんて口にも出したくなかった。
そんなボクの責めるような口調に、苗木クンはカァァァ、と顔を赤くする。
その反応に、ボクは、希望的観測のほうかもしれない、と思った。
そして、ボクが指を引きぬいた時、小さな、本当に小さな声でぽそり、と呟いた。

「自分、で、」

してた、と後半になるにつれ聞きづらくなったその言葉を幸いにもボクの聴覚は拾ってくれた。

「…さっき、みたいに?」

真っ赤な顔をますます真っ赤にして、苗木クンは俯いて、小さく肯いた。

「…最近、あえなくて。借りてたコートが、狛枝クンの匂いがするなぁって…そう、思って…」

ぽつり、ぽつり、呟く言葉は、ボクの理性の糸を切るには十分すぎる凶器だった。
ああああ、つまり。苗木クン自身もボクを思ってくれてたってことだよね!寂しくて、ボクのコートの匂い嗅いでオナニーしちゃうぐらいには!

「っ!」

いてもたってもいられなかったボクはそのまま苗木クンをベッドに転がした。
ボクのコートを羽織って、上はジャージ、下はなにも着てない苗木クンは、一瞬きょとん、としていたけれどボクと目があった瞬間に、さっと顔色を変えた。

「こ、こまえだくん…?」
「なあに?苗木クン」

多分、自分でも凄くアレな顔をしてるっていう自覚はある。
でもあれもこれもそれも全て、苗木クンが可愛いからだと責任転嫁をすることにした。

「煽ったのは、キミだからね」





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