拍手で頂いたリク、にょたで出会いから恋愛に発展するお話ということで書いてみました。
こんなものでよかったでしょうか…。いつでも返品受け付けますので…もしイメージ違うよ!なときはまた教えて下さいませ…! リクエストありがとうございましたー!



出逢ったのは入学式から一週間がたった頃。
好奇心と自分の趣味、そして口実のために新しく入った『超高校級』の才能を持つ生徒と、自分と同じ『超高校級の幸運』を見ようと新入生の教室へ向かった先だった。
七八期生の教室は七七期生の教室とはやっぱりちょっと雰囲気が違っていたけれど、溢れる希望に満ちた空気は感じる事ができた。
事前に情報を手に入れていたから、どの子がどの『超高校級』かは大体わかる。
キラキラしたオーラに満ちた中にいる、ある意味特別なその子は逆の意味で目を引いた。
多分これが普通の学校だったなら、目にも止まらないだろう。それほどの平凡さ。普通さ。

「ねぇ、『超高校級の幸運』ってどのこ?」
「…そのこに何のようかしら?」

ああ、この子が超高校級の???。学者か研究者か探偵か…多分、頭が凄くキレる子だ。
学内でも公開されていない才能の持ち主──霧切響子さんはクラスメイトを呼び出す見知らぬ男、つまりボクを警戒しているように見えた。
どこから警戒されたのかわからないけれど、そんな警戒心をぶつけられることさえボクにとっては喜ばしいことだ。
ぞくぞくとするほどの歓喜を感じながら、ボクは笑顔でそれを隠す。

「ボクも『超高校級の幸運』なんだけど、七八期生の子はどんな子かなぁって思って、ね」
「…苗木クン、お客様よ」

霧切は入り口近くの席で友人たちと談笑していた少女を呼ぶ。
え、と首を捻ったその子は入り口に立つボクを見てますます困惑の色を強くした。
見知らぬ先輩に呼び出される。けれど理由がわからないから困ってるというところかな。
そんなところもやっぱりどこからどうみても普通の子だった──たとえば、超高校級の才能という宝石の中に紛れ込んだただの石ころのような。
こちらに向かってくるその子の耳元に霧切さんは擦れ違いざま何かを囁いた。「苗木クン」はちょっとだけ彼女の方をみて瞳を揺らし、小さく頷く。

「はじめまして、かな。ボクは狛枝凪斗。七七期生の、キミと同じ『超高校級の幸運』だ」
「あ、苗木誠です」

七八期生の生徒たちは気になるのか、何人かがこちらに視線を向けていた。
心配、興味、好奇心──その色は様々だったけれどそこには彼女への感情が伺える。

「これから、会う機会が増えると思うから先に会っておこうと思って」

ボクがそういうと「苗木クン」は納得したように、安堵の表情を浮かべた。
こちらこそよろしくおねがいします、と高校生にしては幼い顔で笑うその子に、ボクはただよろしく。と返すしかなかった。

これがボクと苗木クンの出逢い。
最初に霧切さんが苗木さんではなくて、苗木クンと呼んだからそのイメージが強すぎてボクの中で苗木誠は苗木クンとなった。
だからかもしれない、ボクはずっと苗木クンを苗木クンと呼んでいた。
そのことに対して、彼女が抗議の一つでもすれば違っていたかもしれないけれど、それもなかったから呼び方が変わることは結局なかった。

同じ『超高校級の幸運』。ボクらを繋いだのは紛れもなくそれだった。
ボクは希望と成り得る才能を持つ生徒たちが好きだけれど、苗木クンはその範疇にはあてはまらない相手だった。
普通で平凡。そんな彼女にボクが傾倒するような要素はない。だからこそ、ボクは彼女の前では割と素のままで過ごすことができた。
憧れも羨望も抱かない相手。何より、彼女にはボクの【幸運】の要素が働かない。
一緒に過ごすことで楽になれる。肩肘をはらずに、余計なことを考えなくてもすむ相手。それが苗木クンだった。

後輩で友達で、多分一番特別な相手。それがボクにとっての苗木クンだった。
苗木クンもボクに対しては結構遠慮が無くって、喧嘩も割とよくする。
まあ、苗木クン自身の性格もあって、あまり長引きはしないのだけれども。

いつものことだった。
明日が休みだね。暇だね。どこかいこうか。買い物行きたいな。
そんな他愛もない会話から、ボクたちは学園外へと出かけることにした。
仲が良い兄妹。そんな風に多分見えてるんだろうか。寧ろ兄弟かもしれない。
苗木クンの恰好は可愛い女の子というよりも、可愛い男の子だ。
短い髪、緑色のパーカーとぴったりしたスキニージーンズ。そして赤いスニーカー。
女の子らしい恰好の一つや二つすればいいのに、と誰かが言っていた気がする。素材は悪くないのだから、と。
ボクにとってはどうでもいいことだった。苗木クンがどんな恰好をしていようが苗木クンであることにかわりはない。

帰り道。
ふと後ろをみると苗木クンはいなかった。
あれ、と思うと数メートル先で何人かに囲まれている。
苗木クンは声をかけられやすい。
道を尋ねられたり宗教の勧誘、ナンパまで。傍に居ないことに気づくと大体誰かに足止めされている。
はぁ、と溜息をついてボクは苗木クンの傍に寄る。
囲んでいるのは見知らぬ男の子が三人。中学生ぐらいだろうか。少なくともボクや苗木クンよりは年下だ。

「…何か用?」
「あ、狛枝クン。この人達道わかんないんだって」

嬉しそうにボクを呼んだ苗木クンに、見知らぬ少年たちは去っていく。
それを見た苗木クンは不思議そうに首を傾げていた。
「よかったのかな」
本当に、この子はもう。

「…バカじゃないの?」
気付くでしょう、とボクはいう。
あんなわかりやすいナンパ。彼等が苗木クンのことをどう思ったかはわからないけれど、わかりやすく年上のボクが来たから逃げたというところだろうか。
苗木クンはお人好しだと思う。多分本当に彼等が道がわからなくて尋ねてきたと思っているんだろう。
そんなボクの暴言を聞いても苗木クンは不思議そうにまた首を傾げていた。


夕方、ボクは七八期生の寮の入り口まで送り届けた。
苗木クンは別にいいよ、というけれど未だに迷うような子を放置はできない。
暗くなる前に帰ってこれてよかったと心底思う。

「えっと、送ってくれてありがとう。楽しかったよ」
「そうだね」
未だにさっきのことが頭に残っていて、ボクは不機嫌そうな顔をしていた。
ぶっきらぼうなボクの返事に苗木クンは困った顔をうかべる。

「えっと、ごめんね?」
困ったように謝るけれど、多分苗木クンは何が悪いかわかってないんだと思う。
いや別に悪いわけじゃないけれど。でもその鈍さとお人好しさはいつか彼女自身を危険にさらす気がしてならない。
はぁ、と溜息をついたボクに苗木クンはくすくすと笑う。

「ありがとう」
「…何?嫌味?」
「ううん、だって狛枝クンボクのこと心配してくれたんだよね」

そういって、苗木クンは嬉しそうに笑った。
あまりそんなに無防備な顔で笑わない方がいい。男の子は狼だというじゃないか。さっきの少年たちじゃないけれど、誰がなにを考えているかなんてわからないし、苗木クンが気付くはずがない。
普段は友達だと思っていようが、ふとした瞬間の仕草にどきっとして襲われるかもしれないのに。
そう思うぐらいに、苗木クンのあどけない笑顔はボクの胸を騒がせた。
信頼されるのは嬉しい。けれど、どうしてだろう。その信頼がとても重い。
こんなところで盛るほど性欲に塗れた思考をしているわけではないけれど、ボクも一応男だ。いつ何があるかなんてわからないのに、少しは警戒すればいいと思う。

「え、狛枝ク──」
「黙って」

こんなに近いのにまだ抵抗一つしない苗木クンに腹が立つ。いつか痛い目を見るだろう彼女への友人として、先輩としての指導と、ちょっとした意趣返しだ。他意はない。
そんな風に思いながら距離を詰める。一センチ、二センチ。呆けたように見つめる苗木クンの大きな瞳にボクの顔が映る。

「っ!」

さっと苗木クンの顔が赤くなる。焦ったように手を前へ付き出してボクと苗木クンの間の距離が広がった。
ぎりぎり、あと三センチぐらいだっただろうか。唇が触れるその直前になってはじめて意識したようだった。
だけどその広がった距離が、ボクには苗木クンからの拒絶のように感じられた。
身勝手だと冷静な自分が呟いた。だけど、衝動は止まらない。
苛立ちのままに、ボクは彼女の右手首を掴んだ。もう拒絶なんてさせない。そんな考えしかなかった。
理由なんかない。ただ、苛立っていた。壁にそのまま押し付けて、もう片方の手で閉じ込める。
──そこで、気付く。握る腕から伝わる震えに。

すっと頭が冷えた。何を自分はしていたのだろう。
ごめんね、と言おうとしてやめる。
キミがあんまり無防備だから。脅かそうと思っただけなんだ。

幾つもの言い訳が頭を巡る。けれど、その全ては音になることもなく消えていく。

苗木クンは自分よりも小さいと知っていたけれど、今はじめてボクは知った。
違う、知っていたけれど、本当の意味でそうだと今になって気付いた。
壊してしまいそうなほど細い手首、華奢な身体、大きな瞳──苗木クンが女の子だということに。

脅かすつもりのはずだった。どんな相手だっていつキミを襲う狼になるかわからないよ、と教えてあげるつもりだった。
だけど、教えられたのはこっちだった。
今まで気付かなかった──見ようとしなかった自分の思いに。

「こまえだくん」

苗木クンが弱々しく呟いたのはボクの名前だ。
何かを期待するような目。そこには当然だけれども少しだけ不安の色が宿っている。
ごめんね。ボクはキミの信頼を裏切るよ。
キミがボクをどう思っているかを知っているつもりだけれど、気づいてしまって、今こういう状況になって誤魔化すことなんてボクには出来ないししたくない。
何よりも、こんな無防備な苗木クンを今までどおりに放っておくことなんて出来ない。

「苗木クンがすきだよ」

だからね、意識をしてね。
ボクのことも、キミが女の子だということも。
男の子は危ないよ。キミがどう思っていても、ちょっとしたことでこうやって狼になるんだから。

「こういう意味で、ね」

首筋にキスを一つするとひゃぁというあまり色気のない悲鳴が聞こえた。



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