戦人→苗木
ヱリカ→黒幕
ラムダ→七海
ベルン→カムクラ
ベアト→狛枝
ゼパフル→モノクマ、苗偽
なんだけど設定上ちょこちょこ変える。
2終盤。苗木だけプログラム介入。その時点でシャットアウトされて外界からの干渉はできず。
EP4→EP6へ。(狛枝、七海生きてる)
豪華に飾られた結婚式場。
全てはデータと言っても、やはり驚きはする。
それもこれも全ては皆のお陰で産まれたものだと思えば、やはり諦められるはずなどなかった。
がちゃりと鳴る、四肢を繋ぐ鎖の音がどうにも耳障りで七海はそっと眉根を寄せた。
隣に座る黒髪の少年はツマラナソウに目の前の茶番を見つめている。
他のクラスメイト達が座るのは普通の招待席だったけれど、七海と彼が与えられたのは特別招待席と名前のついた場所だった。
太い鎖は七海を椅子へと縛り付け、その場から動くことを禁じ。そしてその場所は、新郎新婦の席の目の前。
何を思って、七海と隣の彼をそこへと束縛しているのかはわからない。
けれど、一つだけわかっていることがある。
それは、七海はこれから目の前で行われる事を止めることも出来ず、他の人よりもずっと近い位置で、見なければならないということだ。
にやにやと笑うモノクマと苗木の偽物によって、会は進行していく。
ああ、これから絶望がはじまるのだ。希望と呼ばれる彼を信じていないわけではない。だけど、ここの主はあくまで彼女だ。
彼女の決めたルール上においては、彼女の権限が最も強い。何も出来ない自分が、とても無力で七海はそっと唇を噛んだ。
「愛は寛容にて慈悲あり!愛は妬まず愛は誇らず!ああ愛の力のなんと偉大なことか!人は愛のために生きるのです!」
「超高校級の希望である苗木誠と」
「超高校級の絶望、江ノ島盾子の婚儀、ようこそ御視聴を!」
「……まぁ、江ノ島盾子の偽物だけどね……?うぷぷぷ」
「それでは新郎新婦の入場を迎えよう!厳かに迎えどうか二人の門出を祝って欲しいな!うっぷぷぷぷぷ」
「さあ!いでよ!新郎新婦!」
「墓場まで逃れられぬ婚姻と言う名の束縛の道を歩まれい!」
苗木の偽物とモノクマの司会によると、ようやく式の主役が出てくるようだった。
何者かわからない多数の歓声が、式場を包み込む。
その空気の中で、困惑する希望ヶ峰学園の生徒たちと、睨みつけるように強い視線を送る七海。そして、変わらない無表情で淡々と眺めるカムクラだけが異質だった。
荘厳な音楽と共に、扉が開き、そこから新郎新婦 ── 苗木と江ノ島が姿を現す。
江ノ島に支えられるようにして入場してきた苗木を見て、七海は思わず眉を顰めた。
何か薬でも盛ったのだろうか、苗木の動きはあまりにも鈍い。そうでなかったにしても、彼の状態は通常ではない。
「ねぇ、苗木君に、何かした?」
新郎新婦の入場を見ながら、七海は隣にいたプログラムへと問いかけた。
「何かってなぁにかなぁ?ボク、ただの司会だからわっかんないなぁ!」
にやにやと、苗木に似た姿で、全く似ていないように笑う偽物に湧き上がるのは苛立ちだ。
何を聞いても無駄かもしれない。ぐっと握りしめた拳に、また、手首の鎖がじゃらりと鳴る。
「……御視聴ってこれ中継でもしてるの?」
「ネットジャックの中継だそうです」
「なんでもありってことさ!うっぷぷぷぷ!」
続けて、二つ目の質問。その答えは、あまりにも酷いものだった。
ネットジャックということは、これは不特定多数の誰かに向けられている。
そこには江ノ島盾子が映っている。
それが、本物かどうかは関係がない。
問題は、絶望である江ノ島盾子にしか見えない人物が生きてそこにいる、ということだ。
「……酷いゲームだね、糞ゲーなんてものじゃない」
「本当ですね、ツマラナイ」
ゲームならば、プレイヤーのピンチ ── この場合は、ヒロインというべきか ── には何かしらの助けが来ると決まっている。
彼がこのような状況に陥っていると知っていれば、助けに来るだろうキャラクターは多分相当数いる。
可能性だけでいえば、苗木の仲間たち。未来機関の人々。七海が兄と呼ぶ、アルターエゴ。
けれど、彼らの助けすら期待できない程に、現状は絶望的だ。
何しろここはプログラムの中だ。そしてその中で一番の権限を持つのは、ラスボスに値する相手だった。
まず中に入ることすら許されない。どんな縛りゲーだろうと思うけれど、多分それだけ相手も必死なのだろう。
思わず吐き捨てるように呟くと、隣から同意の言葉が飛んできて七海はそっと顔をそちらへと向けた。
「……カムクラくんは誰がくると思ってるの?」
「可能性としては、まず生き残りの七八期生……ああ未来機関の介入も有り得ますね、彼らにとって苗木誠の価値というものが如何程かにかかっていると思いますが」
淡々と、彼は可能性を提示する。
「ただ、ここまで辿り着けるとは思いませんが」
そして即座に、口にした可能性を叩き潰した。
そして小さく息をついて、結果を一言で言ってのけた。
「どちらにしても、邪魔は出来ないでしょう」
「後一人、いるよね?」
彼の提示した可能性には一つ、ないものがある。
絶望的と思われるこの状況を打破する可能性。たった一人、ここに招待されていない彼。
七海の思う中での一番の可能性は、苗木と同じ才能を持つクラスメイト ──狛枝凪斗だった。
「……貴方は本気で彼が来ると思っているのですか」
七海の言葉に、カムクラは溜息をつく。
「彼が苗木誠を拒絶する理由。それがあの名だと知っていて尚」
「来る……と、思うよ、狛枝くんにとって苗木くんはやっぱり特別だから」
狛枝の心は七海には理解できない。彼の考えを知ることができるほど親しくはない。
それでも、見てきた光景や知っている情報から導き出される答えはやっぱり一つなのだ。
彼女によって与えられた役割がそれならば、きっと彼は来る。
だからこそ、彼の席はここにはないのだろう。
「人の心ってことですか」
興味深そうに、カムクラは頷く。
それを見て、七海は小さく驚いた。
人類の叡智を結集させて創りだされた『超高校級の希望』である彼が、未だに理解しかねているのが人の心だ。
だからこそ、いつものようにツマラナイ、と切って捨てると思っていたから、この反応はあまりにも予想外過ぎたのだ。
だから、七海は思わず呟いた。
「……賭ける?どっちが勝つか」
「やめておきましょう、勝負にならない」
そういった、カムクラの表情を見て、七海は一瞬だけ思考を停止して、小さく息をついた。
── 微笑んだカムクラの表情は、驚く程に"彼"と似ていたからだった。
「さあ愛しあう二人よ!愛の誓約を!」
「物言えぬ夫に代わりて妻は二人を代表して誓約を!」
入場が済み、壇上で二人、寄り添い合う苗木と江ノ島へ、司会の二人は愛の誓約を求めた。
それを聞いて、江ノ島はそっと苗木の近くへと顔を寄せる。
「ほら苗木ぃ、愛の誓約だってさ?」
くすくすと笑う江ノ島を苗木は小さく眉根を寄せる。
身体の身動きが取れなくとも、聴力は多分変わっていないのだ。だから、聞こえてくる言葉に反応する。その顔が苦しげに歪む。
それを見て、江ノ島はただ恍惚の笑みを浮かべている。
江ノ島の表情だけを見れば、結ばれることを喜ぶ花嫁の姿に見えたかもしれない。
けれど、苦しげな苗木の顔は、どこからどう見ても"愛しあう二人"の片割れには見えなかった。
小さく呻く苗木を無視して、江ノ島は楽しそうに軽やかに愛の誓いを口にする。
「妻、盾子は夫、誠を。そして夫、誠は妻、盾子を健やかな日も病める日も希望の朝も絶望の夜も支えあって生きることを誓います……うぷぷぷぷ」
そして、呻く苗木の唇を無理やり奪う。
赤い舌で、苗木の腔内を犯すように荒らす。
「ハァハァなんってあっついベーゼ!お二人の誓いのキス。オマエラ胸につよーく刻み付ければいいよ!『超高校級の希望』と『超高校級の絶望』の濡れ場なんてそうそう見れないよ?お得だよ?うぷぷぷぷ」
「ボクの心も熱くなっちゃう…っ、ほらほら、皆さんちゃんと目に焼き付けて!」
司会の二人の声など気にする様子もなく、江ノ島はまだ苗木へと口付けたままだった。
深く長いキスのせいで、口端からは唾液が漏れ、それが酷く淫猥に映る。
誓いのキスなどではない。これは、一方的な陵辱だった。
暫く後、満足したのか、満面の笑みで江ノ島は苗木の唇を開放する。
伝う唾液を赤い舌でなぞり、綺麗にしていく姿は清純な花嫁とは思えない淫靡さを醸し出していた。
そして視線を司会へと投げかけると、司会の二人は再び会の進行を再開する。
「二人の誓約を聞きました!さぁ次は指輪の交換!身動きできぬ夫の指を妻はどうか支えてあげて……!」
その声を聞いて、江ノ島は再び苗木の顔に自身の顔を近づけた。
「あの時舞園さやかが遺した番号……そんなんで足元救われるなんてもうほんっっとぉゼツボー的なんですけどぉ?ああでも結局苗木たちの思うようには行かなかったしぃ?うっぷぷぷ、流石超高校級の不運様よねぇ!」
くすくすと楽しげに、江ノ島は苗木へと話しかける。結局苗木には何も出来ないのを江ノ島は知っていた。
「アンタ達がコイツラを救う為の計画……それを、私みたいな奴に奪われるのって、どんな気持ち?ねぇどんな気持ちぃ?」
あはははは、と高らかに笑いながら江ノ島は苗木へと問いかける。
答えなど望んでいない。苗木が何を言おうが何をしようが、もう彼には何も変えられないのだ。
「………ち……ろ………」
「はぁい? 聞こえないよー?ワンモア!」
苗木が小さく呟いた声を、江ノ島は聞き取る事ができず、聞き返す。
苗木は、もう一度、絞りだすように声をあげた。
「……地獄に、……落ちろ……っ」
その言葉を聞いて、一瞬きょとんとしたあと、江ノ島は大きな笑い声をあげる。
そうして、しばらく笑った後、とてもとても美しく微笑んだ。
「なぁんだ。それなら安心してよ、苗木ぃ」
江ノ島は苗木の耳朶を食むように唇を近付けた。
ゆっくりと、耳元で囁くように、江ノ島はここがどこかを苗木へと教える。
「……ここが、そこ。うぷぷ、うっぷぷぷぷ……!」
苗木の指に嵌めていた指輪を江ノ島は自身の指に嵌める。
それを確認した司会は、次の段階へと式を進めた。
「では花嫁、続いてあなたの指輪を花婿に……」
そういって、苗木の偽物が江ノ島の元へ指輪を運ぶ。
蓋をあけると江ノ島が嵌めているものよりずっと美しく彩られた指輪がそこにあった。
「すっごい指輪、これで苗木くんは心も体も江ノ島さんのもの!もうメロメロきゅんきゅんだね!そしてぷりてぃできゅあきゅあだね!」
「凄いでしょーこうすると引っ込むのよ?」
楽しげに江ノ島は指輪の宝石をかちりと回す。それと同時に指輪の内側から針が飛び出した。
嵌めた状態で、この宝石を回せば。その結果は想像するだに難くない。
「生涯抜かせるつもりはないからサイズも小さいの」
指よりも小さなサイズ。そして針。
苗木の薬指を生涯縛り続けることになるだろうそれは、指輪と言う名の枷だった。
それを手に取り、江ノ島は苗木へと向き直る。
そうして、嬉しそうに楽しそうにその耳元へと囁くのだ。
「この世界は、アンタの身も心も魂も、全てを永遠に閉じ込める。他の人が出た後もアンタはココで眠り続ける……そしてアンタは永遠に生きた人形になるの。体は私様が使ってあげる。超高校級の希望、その中身が超高校級の絶望なんてなぁんて絶望的!!希望かと思ったら絶望だった!それだけで何人を絶望に陥れられるかっ!考えただけで発情しちゃうぅ!」
苗木の瞳の色は変わらない。そして江ノ島の瞳の色も変わらない。
苗木の瞳には今でも希望があって、そして江ノ島はそれを喜んでいるのだ。
その証拠に、江ノ島の息はどんどん荒くなっていく。
「死ぬことも許しません。でも大丈夫です、ここにお友達だって連れてきます。勿論妻だから私も来ます。安心して下さい。でも浮気は許しませんよ?」
うっとりとした表情で、江ノ島は苗木の手を握る。
小さく、けれど間違いなく男とわかる骨ばった手。それを愛撫するように指でなぞると、苗木の身体がびくりと跳ねた。
「私に永遠に、穢され、辱しめられ。私が勝利の美酒の味を忘れる度に、アンタはその身をもって私にそれを思い出させるの。何度も、何度もね……?舌が噛めるのは、い、ま、の、う、ち。指輪が通ればそれすらも出来なくなるわ。今がアンタが自由でいられる最後の時……はぁ、絶望だわ……!」
恍惚の表情で、江ノ島は苗木の薬指へと指輪を宛てがう。
「ぃ、ゃ……め……て……」
「ダぁメ〜。ほぉら、指、入れちゃうよ?」
くすくすと笑いながら、江ノ島は指輪を苗木の指へと滑らせる。
小さく作ってあるサイズだから、普通に入れて入るはずがない。力を込めて押し込む。
その度に、苗木の顔は苦痛に歪んだ。
「ぁ、……やだ、……い、……痛ぁ……ぃ…ふぁ…っ、」
「うぷぷ、苗木いい声でなけるじゃないの、はぁ私ぞっくぞくしちゃうわ……っ」
「痛ぅ……っ、ぅ……っ……む、無理……、そんなの、……入るわけ……」
「……だぁいじょうぶよ、苗木ぃ。入るから、ちゃぁんと、ね……」
江ノ島は淫靡に笑う。そして、一旦指から指輪を外した。
細い苗木の指を口に含んで丹念に唾液で濡らしていく。
舌を這わせ、時折歯を立てながら。口から銀の糸を垂らして、江ノ島は指輪と苗木の指を自らの唾液で侵した。
そして、銀の糸を引くその指輪を見せつけるように苗木の目の前まで掲げる。
「……力抜いて、ね?一気に奥まで入れちゃうからさぁ。……無駄な抵抗なんかしてないでさぁ、抵抗しない方が痛くないよ?」
もう一度、指輪を苗木の左薬指へと宛てがう。苗木の指よりも僅かに小さいサイズのそれは、唾液の潤滑作用もあって、ぬるりと根本へと滑っていく。
それを見て、江ノ島は満足気に笑った。
「ほら見てよ、ぬめって入るようになった」
「ぃや、……ぁ、………あ………っ、」
ゆっくりとそして深く。苗木の指は、指輪を貫いていく。
無理やり根本へと押さえつけられる。感じるのは指を締め付けるような痛み。
血が止まったかのような錯覚さえ覚える。
「ぉ、が……ぃっ、……はぁ……っ、」
「ほら見なさい、一番奥まで入ってるでしょう?」
「……痛ぁ、……痛…い、……抜…ぃ……て、」
「ね、一番奥まで入れたまま最後の仕上げ。これでアンタは私のもの」
うっとりとした表情で、江ノ島は笑う。根本に食い込んだ銀の指輪を苗木へと見せつけるように、その眼前へと掲げた。
「ぃ……、……ぃゃ……、ゃ……めて、」
「……いいわ、許して下さい、絶望的なまでに綺麗で美しい江ノ島盾子さまって言えたら、やめたげる」
「…………ほ、……ほんと……に………、」
「"お許し下さい、絶望的なまでに綺麗で美しい天才、江ノ島盾子さま。生涯を犬として扱われ、首輪に繋がれて生きることを誓いますから、この指輪だけはお許し下さい"って。……そう言えたら、この指輪だけは許してあげる。この世界に閉じ込めることに代わりはないけれど、アンタのちょっとした自由ぐらいは保証するだけの慈悲を見せてあげるわ」
「 」
「……ハぁイ…? ……よく聞こえませんよぅ……?」
にたにたと笑いながら、江ノ島は芝居がかった調子で苗木へと耳を傾ける。
苗木はそんな江ノ島を強い瞳で睨みつけて、絞りだすような声で叫んだ。
「許さない、ボクは、絶対……許さない……っ」
それでも苗木の瞳からは光は消えない。
これが希望。皆の望む希望。それを目の当たりにして、江ノ島は確かな興奮を味わっていた。
オリジナルを打ち負かした光。こんな絶望的な状況でも消えないその強い意志。
それを真正面から受け止めて、ぞくぞくと背筋が震える。色混じりの吐息が洩れた。
「……やっぱり、アンタは飼い慣らせない犬って感じね。でも、そこがいい」
そんな苗木を熱を帯びた目で見て、江ノ島は呟き。そして、笑う。
思い通りになる『苗木誠』など江ノ島は望んでいないのだ。もしも、苗木が簡単に江ノ島へと屈服するようなら、こんなにも拘らなかった。
愛ではない。恋でもない。それでも、確かに『超高校級の絶望』は『超高校級の希望』へと執着していたのだ。
「どこまでも理解できなくて、どこまでもよくわからないアンタが」
江ノ島はいっそ恐ろしいぐらい美しく微笑んで指輪のダイヤを弾いた。
「生理的に受け付けないぐらい、好きよ」
その衝撃で、指輪から出てきた針が薬指を貫き、苗木は絶叫を上げて仰け反る。
痛みだけではない、はじめて味わう感覚に身体が侵食されていく。
「ぁ、ああああああっっっ………………っ!」
薬指からは少なくない血が流れていく。
その溢れる真紅の滴りに唇を這わせ江ノ島は恍惚の表情で微笑んだ。
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